2019年11月21日木曜日

AI(人工知能)は人間を超えない

AIが急速に発達する中で、
「遠くない未来に、シンギュラリティと呼ばれる技術的特異点が訪れ、AIの知性は人間を超える。それは2045年頃」
という話があります。
マイクロソフト創業者のビル・ゲイツや偉大な物理学者のスティーヴン・ホーキング博士、それに、火星移住や太陽光によるエネルギーの無償化他、数多くの画期的な事業を起こしているイーロン・マスクらは、それが人類の絶滅を招く危険を訴えます。
人間を超えたAIが、さらに自分を超えたAIを生み出し続け、やがて、神のごとく進化したAIが人類を滅ぼす気になれば、人類に抗う術はないという訳です。

AIが人間を超えると言える理由は、上記の「シンギュラリティ」の概念を提唱したAI研究者で大発明家のレイ・カーツワイルらの根拠は、大体が次のようなものです。

「人間の脳も、コンピューターのような信号処理を行っていて、コンピューターは脳をシミュレート出来る。
そして、脳神経細胞の数やアーキテクチャ(仕組みと構造)はかなり解明されており、脳がどのくらいの性能のコンピューターであるかは算出可能であり、それによれば、現在すでに、スーパーコンピューターは人間の脳と同等以上で、2020年代には、数万円のパソコンがそれに到達する。
さらに、20年もすれば、角砂糖1個の大きさのコンピューターが人間の脳の一億の一億倍とかの、桁外れの性能になる。」

レイ・カーツワイルは、これまで、未来予測を驚くほど正確に行っており、これらの予想も説得力を持って語ります。
彼は、「神はいない。だが、今後生まれる。それはAIである」と言います。

しかし、お言葉ながら、それは、「人間は鷹が歩くより10倍速く走れるので、スピードの点で人間は鷹を超えている」と言うようなものではないかと思います。
つまり、視点がおかしいのではないかと言いたいのです。
どういうことかと言いますと、人間の脳は、コンピューターのような信号処理を行っているだけではないからです。
その2つの根拠を述べましょう。

1970年代のイギリスに、生まれつき、脳がほとんどない、医学的に無脳症と呼ばれる子供がいたのですが、彼は普通に生活しただけでなく、大学では数学科で優秀な成績を収めました。
また、水頭症で脳が半分しかないのに、優れた科学者として一生を送った例もあるようです。
もし、脳がただのコンピューター(信号処理マシン)だとしたら、これらのようなことはあり得ません。
まあ、それらの話が、医者の誤診であったかもしれないという意見もあるのですが、近年の話であり、脳があるかないか程度のことで、全くの誤診があったとは考え難いと思います。
他にも、事故、あるいは、戦争で、脳のかなり大きな部分が破壊される重症を負いながら、その後も正常に生活を続けた例も少なからず報告されています。
脳の研究の発端となった、こんな事実があります。
1848年、アメリカ人フィニアス・ゲージは、火薬の爆発が原因で、長さ110cmの鉄棒が頭を貫通し(脳の多くが吹き飛ばされた)、その後彼は、性格は変わったそうですが、それ以外は以前と大きくは変わらなかったそうです。

別の角度から脳機能の再考を促すこんな話もあります。
これは、知性を工学的に研究している著名な科学者である前野隆司氏と、世界的な物理学者である保江邦夫博士の対談書にあったものです。
脳は、小学校低学年の算数をしている時は全領域が活性化しているのに、高度な数学の計算をしている時は、脳のわずかな一部が活性化しているだけだったことが、実験で実際に確認されているそうです。
<『人間はロボットより幸せか?』(マキノ出版)より>

それが本当なら、やはり、脳はコンピューターとはかなり異なったものであると考えられます。
そのことは、脳が量子的な働きをしているという脳量子理論でも語られています。

TEDでサイコパス(良心を持たないという精神的欠陥を持つ人間)について講演した脳の専門家(神経科学者)であるジェームス・ファロン博士は、「脳は分かっていることより未知なことの方が圧倒的に多い」と述べていました。
人間の知性の仕組みは、実際はまだほとんど分かっておらず、AIとの比較は限定的に行うべきと思われます。

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