もし、ロシアのプーチン大統領が「アメリカに核攻撃を行うことを決定した」と演説する映像を見ても慌ててはいけません。
そんな映像は、今や、誰でも作ることができると言っても良いと思います。
少し前に、トランプ前大統領が大勢の警官に逮捕される様子の画像がネット上に流れ、この時は、かなり大騒ぎになりました。
この画像は、ミッドジャーニーという有料ではありますが、わずかな会費で誰でも使えるAI画像生成サービスを利用して作ったもので、そのような画像を作るのはそれほど難しくありません。その出来事以降、ミッドジャーニーではトランプ前大統領の画像を生成することが禁止されました。
こういった静止画像、音声、動画が誰でも作れるようになってきました。
それがどんな意味を持つのか、分かり易い例でお話しようと思います。
◆情報は信用できない
今でも、写真とか録音は犯罪捜査の証拠になりますし、有名人の男女が2人でいる写真を撮られたらニュースになることがあります。
しかし、そんな写真画像は、いまや誰でも作ることができると言って良いと思いますし、今後は、ますます簡単にリアルなものを作ることができるようになります。
上のトランプ前大統領の画像もそんなもので、それを見て信じた人が沢山いたわけです。
そして、冒頭で述べたプーチン大統領が、アメリカへの核攻撃を宣言する本物と区別がつかない動画映像を簡単に作ることができるようになってきました。
これらはAIの発達によるもので、それらのフェイク(嘘)に騙されないためにも、AIの基本的な仕組みと使い方を知っておく方が良いのではと思われます。
AIの基本を知ることで、目の前のデジタル情報が偽物の可能性があることを認識し、簡単に騙されなくなります。
◆AIの仕組み
AIは機械学習によって賢くなりますが、機械学習とは沢山のデータを学習して、データの中の特徴を捉えることです。
たとえば、AIは猫の画像を沢山見て学習すると猫の特徴を発見し、絵を描くプログラムと協力して、モデルなしで猫の絵を描くことが出来るようになります。人間も、基本的に同じことをしています。
同じように、プーチン大統領の映像や声を沢山学習すれば、AIはプーチンの姿や表情や癖や声の特徴を捉え、映像作成プログラムや音声作成プログラムと協力してプーチンのリアルな映像や声を作り出すことが出来ます。
そして、今や、本物そっくりのプーチンの映像や声を作り出すのに十分なデータを、インターネットで誰でも集めることが出来ます。
上のミッドジャーニーには、すでに、トランプ前大統領の画像の十分な学習済みデータがあり、あのフェイク画像を作った人は、ほとんど何の手間もかからなかったのです。
機械学習データを使って画像や動画や音声を作成できるプログラムも沢山あり、無料または低価格で誰でも使えます。
よって、プーチンのアメリカ核攻撃宣言の動画は誰でも作ることができると言って良く、今後はさらに簡単に作れるようになるでしょう。
◆誰でも被害に遭う危険がある
では、模倣できるのは、映像や声が沢山公開されている有名人だけかと言いますと、そうではありません。
声に関して言えば、誰の声を模倣することも、かなり簡単になっています。
沢山の人の声を学習したAIは、ターゲットとなる人物の少しの言葉でも聞けば、その人物の声の特徴をかなり推測できます。そして、少し長い会話でも聞けば、ほぼ正確に声を模倣することが可能です。
例えば、あるお金持ちの息子さんの会話を少し録音したら、その息子さんと同じ声で話し、少し長い会話を録音できれば話し方の癖も真似できます。そんな声で、「お父さん、困ったことになったからお金を振り込んで」と電話すれば、いわゆるオレオレ詐欺を非常に高度に行えるわけです。
◆ITリテラシーの必要性
テレビも自動車もインターネットも、実際にはほとんど誰も、その仕組みを知りませんが、使わないと社会から取り残されます。
特定の人だけが自動車や電話を使える時代には、それらを使える人が圧倒的有利でした。
AIも同じですが、実際に今、AIを使える人と使えない人の差が大きくなってきています。
テクノロジーが進歩するほど、テクノロジーを使える人とそうでない人の差は大きくなり、AIに関して言えば、その差はやがて極端になると思われます。
とりあえずは、AIの仕組みよりも、使い方が分かることで、自分に仕掛けられた悪意を見抜くことができるようになると思います。
ただ、AIの仕組みが少し分かっている方が、自分がAIを活用する時に、効果的にAIを使えますので、ごく簡単なことは理解しておくと良いでしょう。
以上です。